6人以下の室内楽曲

«インテルメッツィ I»
(1998) for Fl and Pf

委嘱:アンサンブル・アクティヴァ
初演:1998年11月29日 東京・津田ホール
アンサンブル・アクティヴァ (Fl. 千葉純子 Pf. 黒田亜樹)
演奏時間:8分
出版:Breitkopf & Härtel


《インテルメッツィ》という私の作品シリーズは、フランスの思想家であり、文芸批評家でもあったロラン・バルト(Roland Barthes 1915-1980) の断章形式についての考察から発想を得ています。彼は、一見無関係にみえる数々のテーマを思いつきのように断章形式で 書き連ねることによって、それらのあいだに隠されたつながりが次第に浮き彫りになることを次のように表現しています。

『断章によって書くことは、円周上に小石をならべていくようなもの、その円の中に私は身をさらけ出す。(並べられた小石のように)粉々に砕かれた私のささやかな宇宙、描かれた円の中心には一体何が現れるのか?』

また、断章の理想は、高度の音楽的濃縮性や、各断章の節回しや連結法といった「音色」によって支配される強いレトリック性であると述べ、俳句を引き合い に出すとともに、こうした断章の美学をもっともよく理解し、実践した作曲家としてシューマンとヴェーベルンを挙げています。


私の《インテルメッツィ》は、こうしたバルトの思考を音楽の上で探求したものです。いくつかの短い断章が「小石を並べるように」続けて演奏されますが、そうして描かれた円の中心に、いかなる私のささやかな音楽宇宙がたちのぼるものでしょうか。

《インテルメッツィ1》では、曲中、バルトの断章から引用した一文が演奏者によって語られます。

《Incidents (mini-textes, plis, haikus, notations, jeux de sens, tout ce qui tombe, comme une feuille)》
(小さな出来事たち[数々のミニ・テクスト、折り目、俳句、メモ、意味の戯れ、すべて落ちるもの、一枚の葉のように])

望月 京


インテルメッツィ I