管弦楽曲

«メテオリット(隕石群)»
(2002)

2 (Picc).A-fl. 2. Eh. 2. Bass-cl / 4.3.3.1. / 4Perc. / Hp / 16.14.12.10.8.
委嘱:読売日本交響楽団
初演:2002年6月28日 サントリーホール
ゲルト・アルブレヒト指揮 読売日本交響楽団
演奏時間:13分
出版:Breitkopf & Härtel
 

〈メテオリット〉は、私の最近の作品のいくつかと同様、科学によって徐々に解明されてきた自然界や宇宙の謎と事実から発想のヒントを得ています。
フランスで 2002年初めに放映されたNHKのテレビ番組〈宇宙未知への大紀行〉によれば、地球上の最初の生命は、隕石に乗って空から降ってきたアミノ酸物質だそうですが、地球は、宇宙から隕石が運んできたその原始的生命の進化発展の土壌であるという事実を音楽に置き換えることが、この作品の出発点のアイディアとなりました。
「音楽に置き換える」といっても、飛んでくる隕石などの映像を音楽で表現するのではなく、そうした現象の内部や背後に隠された「しくみ」を自分なりに探り、音楽の中にとりいれるということに私は興味を持っているのです。
曲の冒頭、「隕石によって運ばれた、原始生命となるシンプルな細胞」として、粒状音響と下降グリッサンド音型が提示されます。それらの音響情報は、生命活動の基本である「繰り返し」(自己増幅)によって次第により多くの楽器へと伝達されていくのですが、生体細胞のそうした情報伝達には、その過程で多くの伝達エラーが生じることが知られているように、私の作品でも、情報は常に正確に伝達されて繰り返されるのではなく、時には一部が欠落したり、変化したり、あるいは伝達されなかったり、更にはそうした変化や欠落による新たな情報が元来の情報と同時に伝えられていったりします。
そのような、伝達による情報増幅と 突然変異が曲の変化発展を導き、作品全体は、音楽細胞の変化発展の土壌として、その成りゆきに従って作り上げられていくことになります。具体的には、たとえば、最初に太鼓の皮をこすることで生み出される粒々した音響は、似た響きを連想させるさまざまな楽器の打音・擦音に引き継がれながら少しずつ音質や粒の 大小を違えた音響に移行してゆくのですが、その「情報伝達」は全曲を通じて常に何らかの楽器が行っています。その粒状音響という情報に、下降グリッサンド音型や、それを顕微鏡で覗くかのようにひきのばすことで現れる倍音音階の一部が、同時に伝達情報として組み込まれてきます。そのような、原形の絶えまない繰り返しから導き出される微細な変化と、それによってもたらされるより大きな変化といった、時間の経過にそった音楽的パラメータの変遷は、ここ数年、私の創作上の中心的テーマのひとつとなっています。
 
望月 京


メテオリット(隕石群)