管弦楽曲

«今、ここ»
(2004) for orchestra and electronics

2.1.Eh.2.B-cl.1.C-bsn / 4.2.2.1. / 4 Perc. / Hp. / Pf. / Live electronics / 12.10.8.6.4.
 委嘱:CIRM (ニース)、フランス文化省
 初演:2004年11月6日 レーニエ3世公コンサートホール、モナコ (ニース・マンカ音楽祭)
 パスカル・ロフェ指揮/モンテカルロ交響楽団
 クリストフ・マゼラ (電子音響)
 フレデリック・プラン (音響)
 CIRM (制作・技術)
 演奏時間:19分
 出版:Breitkopf & Härtel
 
 「一塵の中に世界あり」「一瞬の間に永遠あり」と仏教は教えています。海水がその一滴の中に海の全ての成分を含むように、「今ここ」という時空間には、 私たちが生きる3次元の世界や、線状に流れる時間を超えた膨大な宇宙のあらゆる情報が封じ込められており、その局面の一部が「現実」として目に見える形で 投影されているに過ぎないのかもしれません。
こうした考えにヒントを得て、曲はゴングの1音から始まり、同じ音が何度か繰り返し演奏される間に、 あたかもその1音の中に虫眼鏡を持って入り込んでゆくかのように、 内部に秘匿された音響のさまざまな局面が順次拡大され、耳で聞き取れる形に置き換えられて開示されます。そうして提示された新たな音響情報がさらに繰り返 され、その過程で音響内部は音の粒子やその波形が見えるほどにまで拡大されて積み重ねられてゆきます。こうしたプロセスにより、冒頭に記した世界観が音響 によって表現できないものかと考えました。
電子音響は、音や音色の引き伸ばし、スピーカーと舞台との間の音響移動による空間の拡大 −オーケストラの演奏の一部をリアルタイムで録音し、変調して生演奏に重ねるという処理の繰り返しなど− といった役割を担います。
 
望月 京