アンサンブル曲

«エテリック・ブループリント»
(2005-2006) for 9 players and electronics

Fl, Cl, Trb, 2 Perc, Pf, Va, Vc, Db & electronics

委嘱:ベルリナー・フェストシュピーレ
初演:2006年3月22日  カンマームジーク・ザール、フィルハーモニー、ベルリン (メルツ・ムジーク音楽祭)
ジョルジュ・エリー・オクトルス指揮/イクトゥスアンサンブル
演奏時間:15分
出版:Breitkopf & Härtel

偶然の出会いや思いがけない出来事など、「運命のいたずら」によって、人生の流れが決定づけられたり、変化する経験は、多かれ少なかれ誰もが持っているものと思います。こうした転機は、一体なぜ、どのような因果でもたらされるのでしょうか?
太古より、人間はそれを天上に在る「神」の意志による御業と考え、畏怖し、祈りを捧げてきました。 もし天空(Ether –エーテル)に神が存在し、人間の未来図(Blueprint –青写真)を把握して個人を導いているのだとするなら、「神」はどのような手段で私たちと通信されているのでしょう? 
原始の人々が「神の怒り」として最も恐れた天変地異や、伝染病の蔓延などはその一手段かもしれません。偶然や直感、夢は、もう少し親密で穏やかなかたちの神のヒントだとも考えられます。あるいは誰かに乗り移ってもっと直接的にメッセージを伝えていることもあり得ましょう。いずれにしても、「神の意志」は、発信源とされる天空と、私たちのいる地上との間を「気」を介して、あるいは「気」そのものとして飛び交っていることになります。
《エテリック・ブループリント》では、このような発想から、《ワイズ・ウォーター》における水に代わり、呼吸や囁き、電波など、空気を介する情報の伝達、循環、変化、発展の表現を作曲の主眼としました。
「天空にいる神」とはそもそも誰なのか。どのような青写真のもとに、私たちはどこへ導かれているのか。生死や時空のつながり、理解しがたい「神の御業」に 関する疑問や謎が、曲の最後の部分で脈絡なく瞬間的に引用されるバッハ、ブラームス、カート・コベイン、ボブ・マーリーなどの故人の音楽や、さまざまなノイズによって表現されます。

望月 京


エテリック・ブループリント