アンサンブル曲

«4D»
(2003) for 9 players

A-Fl (& picc.), B-cl (& Es cl), Trb, 2Perc, Pf, Va, Vc and Db (いくつかの楽器に増幅あり)

委嘱:フランス文化省
初演:2004年1月17日 トリアノン劇場、パリ
ポール・メファノ指揮/アンサンブル2E2M
演奏時間:13分
出版:Breitkopf & Härtel

《4D》とは、4 Dimensions (四次元)の意で、《エテリック・ブループリント3部作》の前奏曲として最初に演奏されます。
量子力学者であり、哲学者でもあるデイヴィッド・ボーム (David J. Bohm 1917~1992) は、目に見える物質的世界(明在系)と、 目に見えない、もうひとつの世界(暗在系)の存在を提唱しました。彼によれば、明在系のなかには暗在系のすべての情報が含まれ、また暗在系には、明在系のあらゆる事象が畳み込まれている。 たとえば、現在という時は、瞬間ごとに現実世界に投影される、宇宙の時間的な断片である。つまり、明在系と暗在系とは2つの対立する世界ではなく、一方が 他方に包括されている「全体と部分」としての関係であるという主張です。
直感的に、見えない世界の存在が感じられることはあっても、私たちの肉体 は、そうした世界やシステムの存在を、実証できる明確なかたちでつかまえることはできません。そしてそのような目に見えないもの、証明できないものは、理性によって「存在しないもの」と軽視されがちです。はっきり知覚できる日常世界(3D)から、その裏に隠された見えない世界の存在(4D?5D?)を示唆する音楽を目指し、日常的な楽器が秘める多様な音響の空間構成に腐心しました。
ボームは、「現実と意識の本質を理解することが、 物理と哲学の両分野における私の主な関心事である。その理解は常に不定/不完全であり、 運動と展開とを果てしなく繰り返してゆく」とも述べています。私にとって作曲とは、まさに「現実と意識の本質を理解する」ための特別なツールであり、作曲という音楽的考察を通して、私の理解も、変動と展開を繰り返しているのだと思います。

望月 京


4D